江東区が先日発表した来年度(令和5年度)の予算案に「学校給食無償化の検討に着手!!」という項目が重点項目としてあった。”検討”ではなく”検討に着手”という聞きなれない言葉に戸惑ったが、要するに江東区は来年度は給食費無償化を実施しないということである。
さて、23区では葛飾区や品川区、お隣の中央区などの自治体が実施を決め、多くの地方議員や候補者が党派を問わず訴えている「給食費無償化」そして「教育費無償化」に対し、私高野はやとが実現のためのメリットをお話したい。
まず、給食費無償化の内容であるが、区立小学校や中学校の給食費を無償化することと考える。
1.即効性がある
最も大事な要素であるが、支援金や給付金というのは、基本的には役所に申請しないともらえない。そして手続きも用意する書類含め煩雑なものが多く、申請には期限まである。(=行政の申請主義) 加えて、支援金や給付金が実際に手元に届くのにさらに待たなければならない。しかし、給食費は、利用者から徴収をやめるだけでよく、意思決定さえすればすぐに実施可能である。(その後に自治体から委託業者に給付)
2.コストがかからない
これも非常に重要な要素であるが、給付金や支援金というのはコストがかかる。告知や申請、審査など手続きにかかる行政コストや申請コストがかかる。また、ある政策を実施するのは自治体は委託する協力会社やコールセンターなどを置く必要があると考えられており、そうした委託する中間団体にもコストがかかる。例えば、江東区の命和5年度の予算案では、「3万円分の電子クーポンを18歳以下の区民全員に配布する」だけにもかかわらず、予算31億円に対し、諸経費が6億円以上かかっている。「防災カタログギフト5千円分を、江東区の全29万世帯に配布する」のにも、予算31億に対し、諸経費が6億円以上かかっている。今後、この中身については、業者やスキーム含め江東区議会で明らかになるだろうが、とにかく区民からすれば無駄と思われることにも経費がかかることになる。しかし、給食費無償化は、コストがほぼかからない。むしろ行政コストはさらに下がる。なぜなら、教員が生徒や保護者から給食費を徴収していたコストがなくなる。教員の労働時間を削減できる。コールセンターにも委託業者にもお金を払う必要もない。やるべきことは無料にする。徴収をやめることだけ。一括して自治体から支払うだけである。
※お金の流れは、基本的にG(政府)toC(個人)よりG(政府)toB(企業)の方が圧倒的にシンプルで効率的になる。窓口やお金の流れを一本化でき、余計な中間団体が入らないからである。
3.低所得家庭やひとり親家庭などを助ける
私高野はやとも母子家庭出身であり、その方々の気持ちも悩みを身をもって経験しているつもりだが、低所得家庭の方が所得に占める食費の割合が高くなる。そして私もそうだが、小中高と公立に通っていた。私立にも合格したが、あえて公立に進んだし、大学でも国立への進学にこだわり続けた。それほど公立信仰が強い。
また、生活保護や就学援助も行政の申請主義から申請していない家庭も多い。(うちの母親の場合は、そういった制度に頼りたくない、世間的に恥ずかしいということもあり申請しなかった。) 給食費無償化は申請もいらず、所得が低い家庭ほど恩恵が大きい。子どもが最低限生きていくのに必要なライフラインにもなっている。また、現在の物価高で一番苦しんでいるのが低所得家庭、ひとり親家庭である。
※子どもが最低限生きていくのに必要なライフラインという考えから「子ども食堂」も児童や学生の捕捉率なども勘案しながら全額支援や公営にしていくのが望ましいと考える。
4.子育ては親だけではなく社会全体でするもの
今後、給食費無償化を緊急対策的なものではなく恒常的な政策として進めたいと考える。今、区立の小中学校に限定されているものを、私立にも広げてゆく。所得制限は設けない。子どもの人数にも制限はない。これは、給食費の完全無償化と呼べるものである。低所得家庭やひとり親家庭向けといった所得の再分配という要素より、社会全体で子育てをするという考えに基づく。少子化が進み、子育てにお金がかかる日本で必要な考えであり、政策であると考える。
以上、1〜4まで論じてきたが、「行政の申請主義」に対する解決策としての給食費無償化を再度、論じておきたい。
効率的なお金の使い方そして即効性という観点からも、所得制限やその他の制限を設けないプッシュ型の一律給付が望ましい。周知コスト含む行政コストや申請コストが非常にかかるからである。もし財源の面で必要であれば、国であれば累進課税や資産課税含めた税金面、自治体であれば、税金面に加え、予算の組み替えで調整する。税金や保険、年金は強制徴収だからである。
現在、公立の小学校中学校の教育費は無料である。私が子供の頃からそうだ。だが、家庭の中には、無料である公立ではなく、有料の私立に子どもを通わせる家庭もある。こうした選択ができる社会ということが望ましい。国は、人が生きていく上で最低限必要なサービスを無償提供すべきであると考える。これをベーシックサービスと名付けることにする。託児所、保育園、塾、住宅、医療、交通機関などが挙げられる。基礎的なサービスは無償にして、よりクオリティが高かったり、付加価値があるサービスを選びたい人は今まで通り有料で利用すれば良い。
給食費というのは、このベーシックサービスに当たるし、現代では、高校の教育費もベーシックサービスだと考えても良い。先ほど述べた子ども食堂や今後は大学の授業料なども検討していきたい。
このような視点から、給食費無償化、教育費無償化を訴えてゆく。
高野はやと@江東区