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民生委員について思うところ

民生委員推薦会に区議会議員の担当委員として参加したので、「民生委員について思うところ」をしっかりと書き留めておきたい。民生委員というのは、地域の見守り役で、行政と地域を橋渡しする人である。特に高齢者、障がい者の訪問による声掛け、相談などを行う。業務範囲は拡大しており、子育て世帯、特にシングルマザーやヤングケアラーなどの見守りにも対応する。

この民生委員。とにかく成り手が少ない。江東区では、特に豊洲、東雲、有明などマンションが建ち並ぶ人口増加著しい湾岸エリアは兼ねてより欠員が問題になっており、定員に対し50%ほどしか民生委員がいない状態が続いている。「湾岸エリアの民生委員の不足」が毎度議論の大半を占める。今回の推薦会でも湾岸エリアからの候補者はない。私自身も湾岸エリアに住む当事者として成り手不足の原因を考えたい。

まず、そもそも「民生委員の業務どころか民生委員自体を知らない」民生委員は現在、60歳以上が8割を占めており、残り2割は40代50代、30代以下はゼロである。湾岸エリアの新住民で民生委員を知っている人は多くない。認知の問題。

そして「共働き世帯が多い」行政と連動しており、一応は公務員扱いとなる民生委員。平日の日中に訪問することは、会社員にはハードルが高すぎる。そもそもその地域に日中いないのだから。民生委員の8割弱が現在女性だが、専業主婦が主流であった時代から世の中は大きく変わっている。

「民生委員はボランティアで報酬はない」交通費程度しか出ないのに、業務量が多すぎる。地域に根を張ることで何か得られる仕事を持っている人なら、まだいいがインセンティブがなさすぎる。

「地域コミュニティの希薄化により、むしろ訪問は危険」これはかなり大きいと思うが、地方から上京して地元でもない地域で活動すること自体に忌避感。マンションに住み、近所付き合いもない時代。知りもしない高齢者や障がい者、困窮者に会うこと自体に嫌悪感や危険だと感じる人もいるだろう。

「民生委員以外のチャネルの多様化」高齢者や障がい者、困窮した母子家庭と行政とのパイプ、アクセスするチャネルが、民生委員以外にも増えていることも事実。包括支援センターなど。

「都営住宅の住民は支援を受ける側の人が圧倒的」湾岸エリアの豊洲や東雲、辰巳の都営住宅はどうか。支援をする側に回ることができる人がいないのが現状。

「民生委員は自治会や町会の推薦が必要で自薦は原則不可」インセンティブのない民生委員だが、自治会や町会からの推薦が必要。湾岸エリアには自治会や町会が存在しない地区が多いにもかかわらず。今回推薦された候補も地域に長年貢献していることがわかる素晴らしい経歴であった。町会、自治会から区へ推薦→都で検討→厚生労働省を通して登録完了という流れでハードル高すぎる。

戦後焼け野原から脱しようとする昭和23年に施行された民生委員法。強制加入で相互監視の隣組が戦争に導いた反省から、戦後GHQによる隣組への解散命令。だが、自治体は、自主組織として町会や自治会を温存、放任。それが行政の代わり、行政との橋渡しの役目を果たし高度経済成長を支えたことは十分理解した上で、民生委員制度は、あらゆる面から現在の社会状況に合わなくなってきている。

ということを考えながら、有識者の方々の話を聞いていた。参加した議員は2名で、全14名の委員で私が圧倒的に若い委員であったと思う。区議会議員になって心の底から本当に良かったと日々思う。大所高所から天下国家を語るだけの勘違い人間にならなくて本当に良かった。

地域の課題を含め、与えられた1つ1つの問題を自分の問題と捉え、主体性を発揮し解決に向け行動してゆく。一歩一歩確実に着実に。

高野はやと@江東区