税金、保険料、年金は強制的に徴収されるのに、給付金や支援金など行政から何かもらう時は、自主的に申請しなければならない。そしてその申請情報は知っていないとダメ、さらに手続きしないとダメ、その手続きの多くが煩雑。それに加え期限まである。
こうした行政の申請主義に対する解決策を提示したい。
まず、行政の申請主義に対置する言葉を、「申請レス主義」と名付けます。申請主義には、申請情報の通知、申請手続き、申請期限と3つのハードル以外に、大きな問題があります。それは、申請する際に生じます。申請したい人が申請に必要な情報を行政に教えたくないということ。生活保護など申請の際の個人や家族親族の情報やLGBTQ、特にトランスジェンダーの方の本人確認などが挙げられます。そして、申請された書類や情報を審査し判断する際に生まれる行政の裁量。法律、政省令に細かい規定がないものに対しては、人や組織によってまた状況によって判断に幅が生じます。幅、つまり裁量が生まれるとそこに権力が生まれ、既得権化します。
こうした問題を解決まではいかなくても、問題を分析し行政の申請主義を補完してゆく、行政サービスを市民にとってより良いものにしてゆくというのはまさに二元代表制における議会、地方議員の役割であると考えます。そもそも行政という組織が最大限の力が発揮された状態というのは、行政サービスがそのサービスを対象としている人、必要としているすべての市民に100%行き渡った状態のはずなのです。先着順でも毎度毎度その情報を知っている人だけでもいけないわけです。
さて、行政の申請主義自体を根本的に解決する方法は2つ考えられます。1つ目は、支援金給付金などの対象者を把握し、行政の方からプッシュする方法です。税金や保険料、年金などを強制徴収した際に個人情報を得ているのだから、もちろん可能です。同じ情報を使えばいいのです。住民すべてまたは基礎的個人情報だけで対象がわかるものなどは、郵送による通知が来る場合もありますが、多くの支援金や給付金は通知されません。まったくもって通知されません。個人向けと法人向けがありますが予算が限られたものなどは申請してほしくないかのごとく通知されません。申請情報を記載した掲示板(江東区かわら版)を置いて、駅前やスーパーで話していても感じます。本質ではないのですが、現在登録促進され普及が進んでいるマイナンバーカードを使えばさらに行政サービスをプッシュしやすくなります。ただ、ここで新たな問題が生じます。それは振込口座など自治体が把握していない情報があること。行政サービスをいらないという人がいること。プッシュするたび本人確認と承諾がいることが民法の贈与契約で規定されています。ただコロナの際に配布された布マスク(アベノマスク)など現物給付はこの限りでありません。
そして、行政の申請主義自体を乗り越える最も良い方法は、申請自体をなくしてしまうことです。これこそが「申請レス主義」です。行政サービスのプッシュと裁量行政を解決する方法、それは一律給付です。まずすべての人に給付します。そして税金や保険料、年金は強制徴収なので、どのみち申告が必要になります。そうであるならば、一旦すべての人に一律給付してしまい、各支援金給付金の対象とならない人は税金を徴収する際に合算して返還してもらう、つまりその分多く徴収すればいいのです。例えば10万円給付して、その分10万円多く徴収する。行政サービスの対象となっている人はそのまま給付しておく。行政が徴収する時も、給付する時も申請して審査してお金のやりとりをすることからコストもかかり、時間もかかり、そして不公正感も生まれる。一律給付ならそうした手間もかからない。こうした一律給付することを政策的にはベーシックインカムと呼びます。しかし、ベーシックインカムの最も大事なところは、最低限の生活保障にとどまらず、行政の申請主義、裁量行政を乗り越えるという効果です。
また申請レス主義から少し離れますが、現金給付型の行政サービスだけでなく、住民が日々生活をしていく中で必ず必要となる基礎的サービスをすべて無料にしてしまうという方法も考えられます。託児所、保育園、塾、住宅、医療、交通機関などのサービス。こういったサービスを無料化し提供する方法もあります。基礎的サービスを無料で利用してもらい、個人より圧倒的に捕捉しやすいサービスを運営する企業に利用を申告してもらう。対象となる企業は、合弁にする、公営にするといったこともできます。基礎的なサービスのみ無料なので、家計に余裕がある、誤解が恐れずに言えば、よりクオリティの高いサービスを求めている人は無料の行政サービスは利用せず、今まで通りのサービスを利用すればいいのです。こうした方法を、ベーシックインカムと並んでベーシックサービスと呼びことに致します。
行政の申請主義を乗り越える「申請レス主義」について私高野はやとの考えを文章化致しました。
高野はやと@江東区